- 01: 名前:AZUKI投稿日:2004/05/13(木) 02:32
- 2004年5月。あのファイル共有ソフトWinnyの開発者が逮捕されました。
容疑は「著作権違反(2003年11月に該当者2名を逮捕)の幇助」というもの。
僕自身はどちらかというと「著作権が侵害されては困る商売」をしている人間です。
同時に、インターネット/ネットワークの草創期からこの世界に足を突っ込んでる人間でもあり、ビギナー向けテクニカルライターなんかの末席にもいたりします。
いろいろ、思うところもあります。
- 07: 名前:AZUKI投稿日:2004/05/13(木) 03:43
- ここで、「複製されるファイルの違法性」についても考えてみましょう。
(あちこちに話が飛びますが)
デジタルデータが複製され、拡散されるのが困る理由。
それは「そのデジタルデータは、複製されて欲しくないから」ですが、どんなファイルが「複製されては困る」のか。
(1)個人情報など「公開されるべきではないファイル(ファイルは違法ではないが、【公開された場合】に損害が発生する)」
(2)著作権者が存在し、それによって収益を上げている(換金価値がある)ファイル(商品プログラム、映像、ゲーム、出版物、音楽など、ファイルは違法ではないが、【複製された場合】に損害が発生する)
(3)猥褻物陳列罪に触れる、存在そのものが違法なファイル(無修正エロ動画とか)(著作権者はおおっぴらに抗議できないが、社会風紀上このましくない。ファイルそのものが違法な場合)
(4)複製を受け取ったものが被害を被る害悪なファイル(コンピュータウィルスとか)(著作権者がどうこう以前に、存在そのものが邪悪な場合)
大きくわけると上記4類が考えられます。他にもあるかもしれません。
それぞれ、(1)(2)は、複製されたファイルそのものは合法だが、複製された元の持ち主に被害が及ぶ場合で「複製/公開する【行為が違法】」としたいケース。
(3)(4)は、複製されたファイルそのものが違法で、複製を受け取った側に被害が及ぶケースで、「複製公開された【ファイルの存在が違法】」としたいケース。
(3)(4)は存在が論外な上に、受益者(この場合、複製されたファイルを受け取る側)が被害を受けるわけですから、被害の拡散を食い止めるという意味では、「そういうファイルが流通することを阻止したい」というものです。
(1)はAntinny(キンタマ/ぬるぽ)というWinnyに寄生するウィルス(4.に抵触)などで多くの「機密データ」が公開されていましたが、そういう「情報の複製公開によって被害を受ける」ケース。
(2)は平たく言えば著作権侵害。
(1)も大いに困りますが、それ以上に問題視されていくのが(2)の著作権侵害のケースなのではないでしょうか。
- 08: 名前:AZUKI投稿日:2004/05/13(木) 03:55
- (1)だって困るし、(3)も(4)も社会問題なのに、なぜ特に(2)著作権侵害なのかと言えば。
やはり、「収益の損失」というか「儲かるはずなのに損した!」とする、「予定収入の減益」が絡んでくるからと言えばわかりやすいでしょう。
この場合の「著作権侵害」ですが、デジタルデータの複製は、基本的には「一字一句、ドットひとつ損なわず完全に同じものが複製される」ということですから、「類似意匠の侵害」とか「文章の盗用」といったレベルでの「著作権侵害」とは別種の「損害」が主眼になってきます。
平たく言えば、「出版権」「放送権」「上映権」諸々の著作隣接権によって得られる収益への侵害というのが重視されます。
僕も文章を売って商売している身ですから、思いは複雑です。
自分が書いたのと同じものが一瞬にして広まってしまうという
ことそのものは、文章を書いて発表する本能を持っている者にとってはけっこう魅惑的です。
しかし、自分がもらえるはずだった印税や原稿料が、瞬時に消え失せてしまうとなると、「出すのやーめた」であったりとか、「俺の金返せよ!」といった、浅ましい気持ちが湧いてこないといったらウソになります(^^;)
広く知らしめたい。でも、無価値になってしまうのは厭だ。
このあたりは、相反する心理的葛藤があります。
個人の著作者だけでなく、映像制作会社や出版社にも多かれ少なかれ同様の心理が働いているものと思います。
宣伝して知らしめたい。でも、タダ見は勘弁。みたいな。
実際、コストの多寡はあるでしょうけれども、コンテンツの制作そのものは無償ではできません。
文章などを書いていると「無から有を創り出す錬金術のようなうさんくささ(笑)」や、「投資ゼロでの収益増」みたいな理解をされがちですが、インプットがない状態でアウトプットができないのは、どんな仕事でも同じですし(^^;)
と、愚痴はおくことにして。
デジタルデータが複製拡散していくことを止められないということ自体には同意しますが、複製拡散したデジタルデータの内容が無価値になってしまうことは避けたい。
コンテンツ制作にかかった費用を回収し、次回作を創れるくらいの収益は上げたい。(ウハウハに越したことはありませんが(笑))
この相反する問題を解決する必要があります。
- 09: 名前:AZUKI投稿日:2004/05/13(木) 04:17
- 少し整理します。
・Winnyに見られるようなファイル共有ソフトの機能は、インターネットの本能であるファイル(デジタルデータ)の複製/拡散に適ったものであり、その機能の発展は止められない。
・進みゆく方向として、「全ての(とは言わないまでも、希求の多い)ファイルは、複製/拡散される」。
・著作権を伴い、「発表」されることを目的に作られたデジタルデータが複製公開されることそのものは喜ばしい
・しかし、単なる複製拡散では「オリジナルデータの作成費用が回収できない」
・デジタルデータの複製拡散手段(=インターネット/ファイル共有ソフト)を抑止することなく、複製拡散流布されたデジタルデータの閲覧費用を徴収するにはどうしたらよいか
とりあえず、こんなところでしょうか。
今さら言うほどの問題ではなく、同様の「再生回数が制限されているファイル」や「料金を支払わないとダウンロードできないサービス」などはすでに存在しています。
ペイサービスも様々なものが試されています。
ただ、そうしたものは「見向きもされない」か、「最初に金を支払った後、無償で使えるデータ形式に書き換えてしまう【神】が現れ、以後は無償データ化してしまう」という、やはりいたちごっこになっています。
例えば映像コンテンツなどは、「画面を録画するソフト」を使えばいくらでも別形式にできてしまうわけで、これでは最初のデータにロックがかかっていても二次複製ファイル以降は無意味です。
このあたりの費用回収方法について、まったく手段が講じられてこなかったというわけではないのでしょうけれども、現状ではデータ提供者側の努力が十分であるとは言えません。
47氏の警告する「複製し放題の未来」と「提供者側の怠慢」はそうしたことを示唆したものだったのではと思います。
あながち、荒唐無稽な予言でも悪質な著作権違反幇助とも言えない気がしています。
そうした対策方法は今も確立されていません。
Winny開発者が逮捕されてWinnyサポートページがなくなったからといって、Winnyコミュニティが完全消滅したわけではないし、Winnyを継ぐ者は割とすぐに現れてくることでしょう。
にも関わらず、今も脆弱なデジタルデータは次々とネットワークに放たれ続けています。
自分のコンテンツを「デジタル化する」ということは、窓を開けっ放しで着替えをするようなものです。
覗く方がもちろん悪い。覗きは違法。でも、覗かれたくなかったら、着替えをするときは窓を開けない、カーテンを閉める、または「着替えない」。
イラクでタクシーに乗っていて武装グループに拉致された。誘拐・拉致は犯罪。掠う方がもちろん悪い。として、でも拉致されたくなかったら、イラクには行かない。
今のところ、そうするしかないのかな、とも思います。
かなり無理矢理なこじつけですが(^^;)
出版界で「電子書籍」が今ひとつ花開かないのは、映像以上に複製を作りやすいということを警戒しているというのが大きいでしょう。
電子書籍として公開されているのは、著作権が切れたものか、切れていなくとも著者が逝去されているものか、損害が少ない新人や無名の著者のものが主流を占めています。
(多少ずつ変わっていくのでしょうけれども)
今は技術(主にソフト)の成熟が、早すぎるコンテンツ供給の増大に追い越されている時期なのかもしれません。
このジレンマが解決される日を、「デジタル時代の著者の端くれ」として心待ちにしています。
- 10: 名前:AZUKI投稿日:2004/05/13(木) 04:35
- この文章は、誰も読まないことを前提に(笑)書いていますが、ちょっと書きたかったので(笑)お代はけっこう。
それはそれとして、47氏。逮捕によって名前が知れ渡りましたね。
「カネコ」ってどっかで聞いた名前だよな、と思っていたのですが、
「AniBody」(Windows95時代の人には懐かしい、フィギュアにいろいろなポーズを取らせるソフト)
「NEKO Flight Simulator」(これまたWindows95時代の、そのスジの人は一度はやっている、超有名フライトシミュレーターソフト)
の作者でした。
この人は「3Dオブジェクトを素敵なぶんぶん動かす」ことにかけては他の追随を許さないレベルにいるプログラマだったということですがー……。
PC9801時代に、職業プログラマをしていた友達が、凄く興奮した様子でとあるプログラムをコピーしてくれました。
それは、画面上に「NEKO」という文字が回転するだけの実行ファイルでした。
「NEKO」という文字は横にも縦にも斜めにも回転しています。立体を模した3Dオブジェクトです。
今でこそ珍しくありませんが、PC9801時代、そういったものが動くのを見るのはちょっとわくわくしました。
とはいえ、それを見たのは一太郎がそろそろフロッピーディスク一枚に収まらなくなり始めていた頃。
プログラムは「1個のファイル」ではなく、複数のEXEファイルを複合的に連携させていく方向に動き始めていましたし、HDDの大容量化も始まりつつありました(といっても、まだSASIからSCSIに移りだした頃で、HDDは「大容量40MB!」なんて頃ですが)。
立体を回転させるプログラムを見るのも、決して初めてではなかったかもしれません。
それは、EXEファイルではなく、COMファイル。大きさで言うと、COMファイルのほうが小さく、EXEファイルのほうが大きい。
確か、当時はCOMファイルで動くソフトがだんだん減って、EXEファイルのものが増えて来つつあったような……。
それでも、主流機のスペックは、CPU8MHz、メモリ(キャッシュ)はやっと1MB、HDDのないパソコンだってまだまだ現役……そんな時代です。
当時のプログラマたちは、そんな貧弱なPCを満足に動かすために、できるだけ小さなソフトウェアをひねり出すことに執心していたと思います。
友人に促されて、改めてその「NEKO」という文字を回転させている実行ファイルを見て僕もびっくりしました。
そのファイルは、たった4kb(4000バイト)未満しかありませんでした。
立体の文字を回転(縮小拡大もした)させるという高度なことをやっていて、たったそれだけのサイズ。
「びっくりしたよ。凄い人がいるよ」
その開発者は確か「ネコ」と名乗っていました。
今になって思えば、そのネコ氏こそ、AniBody、NEKO Flight Simulator、そしてWinnyの開発者であった「カネコ」氏、47氏だったのではないか……。
そんなふうに思います。
47氏がまた素晴らしいプログラムを世に送り出してくれることを、今は何よりも深く強く願っています。
- 11: 名前:AZUKI投稿日:2004/05/13(木) 04:41
- 訂正とリンク。
AniBodyじゃなくて、「ANIME BODY」でした(^^;)
●AnimeBody
http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se101490.html [source] [check]
●Neko Flight Simulator
http://www.vector.co.jp/soft/win95/game/se049168.html [source] [check]
●47氏の過去のソフトウェア(Vector)
http://www.vector.co.jp/vpack/browse/person/an011196.html [source] [check]
●47氏本人のwebサイト(nifty)
http://homepage1.nifty.com/kaneko/ [source] [check]
●47氏を応援するページ
http://www.geocities.jp/help47jp/ [source] [check]
- 12: 名前:AZUKI投稿日:2004/05/13(木) 04:56
- それと、47氏の弁護団が決まったみたいですね。
大阪弁護士会の壇俊光弁護士(クローン携帯、ネットワークセキュリティ、ファイルローグ事件など、その筋で著名な弁護士です)が、弁護団長になるようです。
成り行きを注視したいところです。
- 13: 名前:若マス投稿日:2005/05/06(金) 05:12
- 今更ですが・・・・。
Winnyって名前
Win MX の次だから?って聞いた事あったのですが・・・。
『2001年宇宙の旅』と同じ感覚の逆って感じ?
I.B.M→H.A.L
MX→ny
本当なのかな・・・・・。
まぁ、今更どうでもいいけど(笑)
- 14: 名前:cat投稿日:2005/05/07(土) 00:31
余談ですが、昔、SFファンの間で交わされたジョークを思い出します。
「SAL8997」 ← 毛が3本足りない
- 15: 名前:cat投稿日:2005/05/07(土) 00:32
ウワっと、ageちゃったよ。orz
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