プロメテウスは「神から火を盗んで人類に与えた巨人だ」と誤解している人もいるでしょう。 しかしヘシオドスの『神統記』やアイスキュロスの『縛られたプロメテウス』での扱いは違います。人類を滅亡させようとするゼウスの企て
(人間の食物のうち最良のものを神々への供物として要求し、人間を飢えさせようとする計略)
から人間を救うために、プロメテウスは、ゼウスを欺いて牛の脂肪と内臓を供え物に選ばせました(メコネの籤)。これに怒ったゼウスは、人間がそれまで使っていた「火」を奪うことにしました。プロメテウスは、この命令に背いてオリュムポスの鍛冶場からウイキョウの茎のなかに「火」を隠し、人間のもとに運んだのです。また同時に人間たちにさまざまな知識を与えました。ただし、人間が自らの運命について嘆き悲しまないように、人間から未来を知る能力を奪いました。 このプロメテウスの裏切りに怒ったゼウスは、プロメテウスをカウカソスの山の頂に縛り付け、毎日大鷲を遣わしプロメテウスの肝臓を食べさせるという苦しみを与えました。
プロメテウスはティタン神族なので不死身でした。このため夜毎プロメテウスは回復し、いつまでも大鷲から生きたまま肝臓をついばまれる苦しみを受けたのです。長い年月が過ぎた後、プロメテウスはヘラクレスによって解放されました。 |
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近年「知的財産権」という言葉を良くききます。いまや私たちがメディアを通じて得る表現のほとんどは誰かの「財産」ということになりつつあります。そうした中、表現活動をしようとする際に、私たちはちょっと不安になるようになりました。 「私の表現は誰かの知的財産権を侵害していないだろうか」 「私の表現の一部に他の人の作品を使いたいが、使うと罪になるのではないか」 実際には、法によって保護されている表現や知識は限られているのですが、法を専門にしているわけではない人たちには、その判断は困難なものがあるようです(実際は法を専門にしている人でもその判断は難しいのです)。侵害を恐れるあまり、自分の表現や考えを抑制するようなことはなかったでしょうか。もし、そんなことがあったとしたら、残念なことですね。 こんなとき、「使っても良い」ということがはっきりと示されているコンテンツが豊富にあれば、安心して依拠したり使用したりすることができます。そうしたコンテンツがもっと豊富にあれば、もっと幅広い人たちがもっとおおらかに表現活動に着手できるのではないでしょうか。そう考えてこのキャンペーンを始めました。 私たちが独自に生み出した作品については、私たちが自由に処分することができます。貴方が「自分の作品については他の人に自由に使ってもらいたい」と思うならば、そう宣言することができます。貴方の「知性の火」を他の人のために開放しませんか?表現は多様なものです。そして貴方の表現や作品の価値は受け手が決めます。「こんな作品が意味を持つのだろうか」と思っていても、貴方の作品を求めている人が必ずいます。そしてその人の新しい表現や知性の一部として活かされるのは、有意義なことではないでしょうか。 学問や芸術は、私たちが古くから受け継いできたものを応用、展開することで発展してきました。何物も読まず、何物も聴かずに何かを生み出すことが可能でしょうか。私たちが遠くを見通すことができたのは、巨人の肩に乗っていたからです。過去の偉大な人たちが生み出してきた知的遺産が豊富にあるからこそ、私たちは次の問題に取り組み、新しい作品を生み出すことができるのです。そして本来、知的財産権法は、そうした知的遺産を豊富にすることを目的としたものです。 貴方が苦労して生み出した作品については、当然に対価を受けたいと願うでしょう。しかしその一方で、対価を目的としたわけではない作品もあるでしょう。そうした作品について「私はこの作品を皆さんに自由に使っていただきたい」と表明すれば、その作品は巨大な知的遺産の一部となり、他の人の表現活動を助けることになるのです。 |
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